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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

その予防接種、本当に必要ですか?〜B型肝炎ウイルス編〜

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どうも、あんきろさんです。

好評(?)の予防接種記事ですが、少しずつ個別編も書いていきます。
前回のロタウイルス編(「その予防接種、本当に必要ですか?〜ロタウイルス編〜」)に続いて、今回はB型肝炎編です。

毎回書いていますが、ちなみに、私はワクチンは必要だと思っておりますので、タイトルを見て「ここにワクチン否定派がいた!」と喜んでやってこられた方は空振りです。期待に添えずに申し訳ありませんでした。でも読んでいってもらえると嬉しいです。

 

今回もそれなりに長いので目次付きです。

はじめに

B型肝炎の予防接種は2016年10月から定期接種化されておりますので、接種期間内であれば公費での接種が可能です。
以下に詳しく述べますが、基本的にすべての子どもが接種すべきワクチンなので、定期接種化されて本当に良かったです。
接種期間を外れていて公費で接種出来ない方についても、費用はかかりますが接種する方が良いと考えています。

以下に詳しく見ていきます。

B型肝炎ウイルスって?

B型肝炎ウイルスとは、その名の通り感染すると肝臓で炎症を起こすウイルスの1種です。

感染の経路としては、妊娠中や出産時にお母さんから子どもに感染する垂直感染とそれ以外の水平感染があります。
水平感染は主に血液を介しての感染が考えられていましたが、最近の研究では唾液や汗、涙液などその他の体液が血液と接触することによっても感染が成立すると考えられています。

感染後の経過としては、一過性の感染で終わるものと持続性の感染に移行するものの2種類があります。
成人などある程度免疫の発達した人がB型肝炎に感染すると、一過性の感染を起こします。
一過性の感染の多くはほとんど症状を出さない不顕性感染になりますが、2-3割は急性肝炎を起こし、さらにその一部は劇症肝炎という命を脅かすような重篤な肝炎を起こします。
この一過性の感染は、その名の通り一過性のもので慢性化することはないと考えられていましたが、治癒後もウイルスのDNA(設計図みたいなものです)は肝臓で検出されることがあり、免疫の状態が低下するとウイルスが再活性化することが知られてきました。
また、日本で従来検出されていたB型肝炎のウイルスとは別のタイプで、欧米でよく見られていたタイプのウイルスが近年日本でもよく検出されるようになってきたのですが、このウイルスは成人が感染しても10%程度が持続性の感染に移行するとされています。

一方で、母子間の垂直感染や乳幼児期の水平感染など免疫が発達していない時期の感染は持続性の感染に移行しやすいと言われています。
だいたい、1歳未満の感染で90%程度、1-5歳での感染で25-50%が持続性の感染になると報告されています。
この場合は、ある程度免疫が発達した学童・思春期に、上に書いた一過性の感染のような状態となり、その後は90%くらいは無症候性キャリア(特に症状はないけど、体内にウイルスがいる状態)になりますが、10%程度は慢性肝疾患に移行します。
この慢性肝疾患というのは、慢性肝炎から始まって、炎症が長期化するに従って肝硬変に移行し、最終的には肝がんに至ってしまうという状態のことです。

日本ではB型肝炎ウイルスのキャリアが110-140万人、慢性肝疾患の患者が7万人程度と推定されています。
100万人以上いるキャリアのうち、数十万人は自分でも感染に気づいていないのではないかという推定もあります。

B型肝炎ウイルスのワクチンって?

B型肝炎ウイルスのワクチンは不活化ワクチンです。従って、ワクチン接種後は1週間開ければ他のワクチンの接種ができます。

推奨されている接種スケジュールは、生後2ヶ月以降に1回目の接種、それから4週間以上開けて2回目の接種、1回目から20週以上開けて3回目の接種という形になります。
公費での接種が受けられる定期接種としては、1歳までに接種を完了しなければいけないので、接種はなるべく早くに開始するのが無難です。
2ヶ月になってHibや肺炎球菌、ロタウイルスのワクチンと同時接種で1回目のB型肝炎ワクチンの接種というのが現実的です。

日本では、従来は母子感染予防や医療従事者など感染のリスクが高い対象者の使用目的だったので単独のワクチンですが、外国では4種混合ワクチンと同じように、接種回数を減らすために他のワクチンと混合になったワクチンも使用されています。
日本でも定期接種化されて乳児の他の予防接種と同時接種を行う機会が増えたので、他のワクチンにB型肝炎ワクチンの成分を含めた混合ワクチンの開発が進むかもしれません。 

ワクチンの効果は?

以前に「その予防接種、本当に必要ですか?」で触れましたが、ワクチンの効果には接種した人をワクチンによって病気から守る「直接効果」と、ワクチンを接種していない人がワクチンを接種した人によって守る「間接効果」というのがあります。
わかりやすくするためにこの2つに分けてみていきましょう。

直接効果

B型肝炎の予防接種というと、医療従事者などのB型肝炎のキャリアに接することが多い人への予防接種というイメージが強いと思いますが、実は幼児は大人以上にB型肝炎ウイルス感染の危険にさらされる機会があります。

上に書いたように、B型肝炎は血液以外の体液中にも存在するので、それが傷口など血液が露出している部分に接触することで移る可能性があります。
子どもはいろんなところで転んだり引っ掻いたりで生傷をたくさん作りますので、周りにキャリアがいればその生傷にキャリアの体液が接触する機会はたくさんあります。
そうした機会で感染する確率というのは血液同士を介しての感染に比べると圧倒的に低くはありますが、やはり危険性はあり、日本には無症候性キャリアの方はたくさんいますし、そのうちには自分ですらキャリアであることに気づいていない人も多く含まれています。
このような状況では、子どもの周りにB型肝炎キャリアがいない環境を作るというのはほぼ不可能だと思います。
そういった状況で感染を防げるのは予防接種のみです。

効果については、スケジュール通りのB型肝炎の予防接種を行うと、乳児の場合は95%以上が有効な免疫を獲得する(ウイルスに対する十分な抗体産生能力を獲得する)とされています。
この抗体産生能力は年月が経つにつれて徐々に低下していくことが多く、15年くらい経つと十分な抗体価を保てない人が半分くらいになるのですが、そういう人にワクチンを追加接種すると、速やかに抗体産生能力が回復するので、体内に免疫を記憶する細胞はしっかり残っていると考えられています。
海外での報告ですが、B型肝炎ワクチン接種後20年の調査で、感染自体が83.4%、キャリア化が96.5%予防されたと報告されています。
このワクチンの大きな目的は慢性肝炎、肝がんにつながるキャリア化の予防ですので、十分な効果だと考えられます。

なお、成人後にB型肝炎キャリアの体液に接する可能性が高い職業(医療従事者など)につく方や、ごく身近にキャリアがいる方は、抗体価を測って低下していたら追加接種する方が良いと考えられます。

間接効果

これも重要です。
上に書いたように、知らない間にB型肝炎のキャリアになっていることは珍しいことではないので、自分が人に移してしまう可能性というのも他人事ではありません。
実際に1987年の調査で、保育園児269人を調査してそのうち10名がB型肝炎ウイルスキャリアの園児から感染があって、そのうち4人がキャリア化したという報告があります。
30年前の調査なので現在は状況がだいぶ違うと思いますが、保育園のような場で子どもから子どもに移るということはどうしても防げないことです。

中にはB型肝炎ウイルスキャリアの子どもの入園を断る保育園や幼稚園があるようですが、まぁそれはその保育園なり幼稚園のフィロソフィーなのでとやかく言いませんが、みんなにB型肝炎の抗原や抗体を血液検査で調べてもらううんですかね?
検査もしていないのに自己申告では全く意味ないですし、B型肝炎ウイルスのキャリアになりたくてなる人はいないので、キャリアの入園拒否よりB型肝炎の予防接種を打っていない子どもの入園を拒否する方が理に適っていると思うのですがね。まぁ、これについてはようやく定期接種化されたので今となってはほぼ無意味な議論ですが。

ワクチンの副反応は?

B型肝炎の副反応として重篤なものは現時点では報告されていません。
注射部位の発赤や腫れ、硬結などが時に見られることがありますが、放っておけば自然に治ります。
発熱の報告もありますが、他の予防接種と同様に数日で自然に解熱します。
非常に安全性の高いワクチンと言えます。

これは副反応とは全く別の話ですが、ワクチンを接種してもB型肝炎ウイルスに対する抗体が十分に産生されない人(=non responder、low responder)が数%程度います。
かくいう僕もこのnon responderで、B型肝炎のワクチンを何回打っても全然抗体ができません。
学生実習に行く前に3回+追加の1回、研修医になるときに3回+追加の1回、別の病院で働き始めたときに3回と計10回B型肝炎のワクチンを接種していますが全くダメです。毎回抗体検査で引っかかります。
僕のようにB型肝炎のワクチンを10回以上打っている人間は世の中にそう多くはいないんじゃないかと思います。
そういったnon responderでも接種は無駄ではなく、抗体ができていなくてもB型肝炎の予防効果はある程度あると言われています。

結局接種した方がいいの?

ということで、はっきり言ってこのワクチンを接種しない理由はありません。
乳幼児期の感染でB型肝炎のキャリアになってしまうと、将来的に慢性肝炎や肝がんの危険に怯えながら生活しなければいけませんし、それ以降の感染では一過性の感染で終わることが多いとは言え、急性肝炎は時に不幸な転帰をとることがある疾患です。
無自覚のB型肝炎キャリアの方は、子ども・大人も含めてたくさんいると考えられますし、上で書いたように様々な体液にB型肝炎ウイルスは排出されますので、始終からだに生傷を作る幼児にとって、B型肝炎ウイルスに感染するリスクを避けることは不可能です。
何より、周りの子どもがみんなB型肝炎の予防接種をしていれば、不幸にも望まずにB型肝炎のキャリアになってしまった方(子どもも含め)が、周りの子どもに移してしまうことに怯えずに生活することができます。

このように直接効果、間接効果いずれを見ても、B型肝炎ウイルスはたとえ自費であったとしても、すべての子どもが接種すべきワクチンです。
もちろんWHOでも全ての子どもが接種を受けるべきワクチンとして推奨されています。

最後に

B型肝炎のワクチンはなかなか定期接種化されなかったので、国は何をしてるんだと思っていましたが、ようやく定期接種化されて本当に良かったです。
お金の心配をしなくていい上にデメリットもほとんどないので、定期接種の対象時期の皆さんはしっかり打ってくださいね。
定期接種の対象時期を外れてしまったけどまだ接種していない皆様におかれましても、日本ではまだまだB型肝炎ウイルスは環境中にありふれたものですので、乳幼児にとって感染のリスクは高いと言えます。
自費になってはしまいますが、接種されることを強くお勧めします。

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