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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

その予防接種、本当に必要ですか?〜Hib編〜

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どうも、あんきろさんです。

個別の予防接種記事その3はHibについてです。
予防接種の最初の記事(「その予防接種、本当に必要ですか?」)でHibの効果についてはある程度書きましたが、それも含めて補足する形でここでは書いていきます。

これも毎回書いていますが、私はワクチンは必要だと思っておりますので、タイトルを見て「ここにワクチン否定派がいた!」と喜んでやってこられた方は空振りです。期待に添えずに申し訳ありませんでした。でも読んでいってもらえると嬉しいです。

 

目次です。

はじめに

後で詳しく述べますが、Hibワクチンは非常に効果が高いワクチンです。深刻な有害事象もほとんど報告されておらず、安全性も高いといえます。
そんなHibワクチンですが、海外では1990年代から使用していたにもかかわらず、日本で使用出来るようになったのは2008年です。
この間に、ワクチンを接種していれば感染しなかったHibの髄膜炎に多くのこどもが罹患して、決して少なくない人数が亡くなったり後遺症を残したりしました。
日本のワクチンを取り巻く環境(世論や行政)の闇は深い(深かった)と言わざるを得ません。
そうしたワクチンギャップ(他の国では使用出来るワクチンが日本では使用できないこと)の象徴だったHibですが、2013年からは晴れて定期接種となり、今ではほとんどすべて(すべてではないのが残念ですが)の子どもが接種するワクチンになりました。
本当に長い道のりですね。

Hibって?

HibはHaemophilus influenzae type bの略で日本語に直すとインフルエンザ菌b型になります。
b型というからには他の型もあり、この型は菌の莢膜(菌の表面を覆っているゲル状の膜)の違いによって分類されています。ちなみにa〜f型と無莢膜型(莢膜を持たないタイプ)があります。
インフルエンザ菌は乳幼児の髄膜炎の原因となりますが、髄膜炎の原因となるのは95%以上がb型、つまりHibです。

Hibが原因の乳幼児の髄膜炎は非常に怖い病気で(Hibに限らず細菌性の髄膜炎は非常に怖い病気なのですが)、適切な治療が行われても致死率は5%程度で、てんかん・難聴・発育障害などの後遺症を起こす確率が20%程度と言われています。

髄膜炎の他にも、急性喉頭蓋炎という急激な経過で呼吸困難が進行して窒息に至ることもある怖い病気もHibが原因となることが多い疾患です。
髄膜炎も怖い病気ですが、急性喉頭蓋炎も分単位で患者さんの呼吸状態が悪くなっていくので、小児科医としてできれば出会いたくない疾患です。
その他にも、よくある疾患としてはHibは肺炎などの原因にもなります。

近年Hibで問題となっていたのが抗生剤に対する耐性で、治療に難渋するHibが増えていていろいろ大変だったのですが、ワクチンの接種が普及したおかげで最近はあんまり耳にしなくなりました。

Hibのワクチンって?

Hibのワクチンは不活化ワクチンです。従って、ワクチン接種後は1週間開ければ他のワクチンの接種ができます。

推奨されている接種スケジュールは、生後2ヶ月以降に1回目の接種を開始し、それ以降は4週以上開けて生後半年までに3回を接種し、1歳を過ぎて追加接種となります。
生後半年を過ぎると、母親からの移行抗体が減って感染症にかかりやすくなるので、それまでには3回の接種を済ましておくのが重要です。2ヶ月を過ぎたらできるだけ早く接種を開始しましょう。
2ヶ月になって肺炎球菌やB型肝炎、ロタウイルスのワクチンと同時接種で1回目の接種というのが現実的です。

追加接種も非常に重要です。
初回接種後しばらく時間が経つと、徐々に抗体価(免疫の力)が低下してきて、1歳を過ぎる頃には十分な抗体価を維持できない子どもが一定数いることが報告されています。
Hibの予防接種の添付文書(薬剤の説明書)には初回接種後およそ1年開けての追加接種となっていますが、1歳になって初回接種後7ヶ月以上経過すれば速やかに追加接種を行うことが望ましいです。
多くのお子さんは2、3、4ヶ月でHibの予防接種をすると思うので、この場合は1歳になればすぐに接種できます。水痘や麻疹・風疹の予防接種と同時にすると手間が省けますね。
追加接種率がやや低いので、これを改善していくことがHibの今後の課題と言えます。

Hibのワクチンは現時点では単独のワクチンですが、海外では4混と混合したワクチンなども使用されており、予防接種の回数を減らせることから、今後国内でもそのうち使用出来るようになるのではないかと考えています。

ワクチンの効果は?

以前に「その予防接種、本当に必要ですか?」で触れましたが、ワクチンの効果には接種した人をワクチンによって病気から守る「直接効果」と、ワクチンを接種していない人をワクチンを接種した人によって守る「間接効果」というのがあります。
わかりやすくするためにこの2つに分けてみていきましょう。

直接効果

国立感染症研究所の推計では、ワクチン導入前は日本全国で大体毎年400例程度のHibによる細菌性髄膜炎が発生していたと考えられています。
それなりに大きい病院で小児科医をやっていると、年に数例はHibの髄膜炎を診ていましたし、中には不幸な転帰を辿った子どももいます。それがワクチン導入を境に劇的に状況が変化しました。

上で書いたように、Hibは2008年に任意接種が開始され、2010年から公費助成、2013年定期接種になったワクチンですが、厚生労働省が10道県で行っている調査では、2014年以降に髄膜炎を含めた侵襲性Hib感染症(血液や髄液など本来無菌の場所から菌が検出される感染症のこと)は0になっています。
この侵襲性Hibには上で触れた急性喉頭蓋炎も含まれています。
つまり、Hibによる命に関わるような怖い病気はワクチンによってほぼ起こらなくなったということです。

これは、先に予防接種が開始されている海外でも同様の報告がされていて、概ね侵襲性Hib感染症を95%以上防いでくれると報告されています。
このような報告が1990年代からあるのに、日本で使用出来るようになったのは2008年なんて、何度も言うようですが日本のワクチンを取り巻く環境は本当に闇が深いとしか言いようがありません。

ちなみに、インフルエンザ菌は中耳炎の原因にもなるので、Hibの予防接種で中耳炎が減るのではないかという期待もあるのですが、中耳炎については原因としては無莢膜型のインフルエンザ菌が多いので、Hibの予防接種によって中耳炎が減少したという報告は残念ながらありません。

間接効果

間接効果については、定期接種化されてほぼすべての子どもが直接効果によってHibから守られている現状では、実はあまり重要ではありません。
あえて言うならば、Hibは大人でも肺炎や喉頭蓋炎を起こすことがあるので、子どもが接種することによって、周りの大人のHibの感染症は少しだけ減るかもしれません。でもその程度です。
とはいえ、この間接効果の意味が薄くなる現状こそが、ワクチンの目指すところなのです。
これがさらに進むと、天然痘のようにその病原体が根絶されて、ワクチンの必要がなくなります。
効果が出れば出るほどほど逆説的にその意味が薄れていくのは、ワクチンの非常に難しいところです。

ワクチンの副反応は?

Hibワクチンの副反応として重篤なものは現時点では報告されていません。
他の予防接種と同様に、発熱や注射部位の発赤や腫れ、硬結などが時に見られることがありますが、自然に軽快するものがほとんどです。
Hibワクチンの単独接種と他の予防接種との同時接種による副反応の出方の違いを調べた研究もされていますが、一部に肺炎球菌との同時接種で発熱の頻度が上昇するという報告はありますが、基本的には副反応の出方に大きな違いはないと考えて良さそうです。

最後に

ということで、Hibのワクチンを接種しないという選択肢は基本的にありません。
これだけ効果が明らかな予防接種をしないということは、子どもに対して親としての責任を一部放棄していることと同じです。
将来子どもが大きくなったときに自分の母子手帳を見て、Hibの予防接種がされていなかったらどう思うでしょうか?
「なんで予防接種しなかったの?」と言われた時に納得できる答えはそこにありますか?
「髄膜炎になってたらどうするの?」と言われた時に納得できる答えはそこにありますか?
どこを探してもそこに納得のいく答えはないと思います。

これだけHibのワクチンが普及してHib感染症自体が減っている現状では、おそらくHibの予防接種をしていなくてもHibの髄膜炎にかかる可能性はかなり低いと思います。
でもそれは、ワクチンを接種した子どもの間接効果によって守られているんだということをしっかり自覚してワクチンを接種しないという選択をしてください。

何度も書きましたが、今の状況は、ワクチンさえあればかからなかった髄膜炎に罹患してしまった何千人という子どもたちの上に成り立っているのです。
そのうちの何百人かは亡くなり、命は助かっても数人に一人は後遺症に悩まされています。
その事実を重く受け止めるべきだと思います。

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