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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

子どもの誤飲について小児科医が語ってみるよ

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どうもあんきろさんです。

ブログの更新が滞っていてすいません。
twitter(@ankylosan)にも書きましたが、年度末で忙しい上に、3日連続で送別会があって無駄にキツかったです。

おかげでうちの奥さんも子どもを置いて家出しそうになるなど激おこぷんぷん丸です。
皆さんも飲み過ぎには注意しましょう。

ということで、「飲み」つながりということで今回は子どもが飲んじゃいけないものを飲んじゃったお話です。

 

はじめに

子どもが食べ物以外の飲んじゃいけないものを飲むことを「誤飲」と言います。
小さいお子さんをお育てのお父さんお母さんはよくわかっていらっしゃると思いますが、乳幼児はとかくなんでも口に入れたがります。
このため、小児科領域で誤飲が起こるのは80-90%が3歳未満です。
この飲んじゃいけないもののうち自然に吸収されないものを「異物」と言って、消化管(胃・食道・腸)などに入れば「消化管異物」、気道(気管・気管支)に入れば「気道異物」と呼ばれます。

小児の誤飲のうち、実際に中毒や有害事象が見られるのはだいたい全体の10-20%と言われています。

誤飲の原因は?

厚生労働省が毎年「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」というのを発表していて、その中に小児の誤飲に関する報告というのがあります。
最新版の平成26年度分のリンクを載せておきます。

www.mhlw.go.jp

この報告、僕が追える限りで昭和54年から発表されているのですが、昭和54年から最新の平成26年まで1回を除いてトップを独走し続ける誤飲界の王者がいます。

そう、タバコです。
ちなみに、1回だけタバコが2位になったのが平成25年度ですが、その年の1位は「医薬品」でした。
「医薬品」も近年増え続けていて、常にタバコと首位争いをしています。

参考までに平成26年度の小児誤飲top10はこんな感じです。
1.タバコ  20.2%
2.医薬品・医薬部外品 14.3%
3.金属製品 12.0%
4.プラスチック製品 10.9%
5.玩具 8.7%
6.電池 5.9%
7.洗剤類 5.6%
8.硬貨 3.4%
9.乾燥剤 3.1%
10.食品類 2.8%

実際に救急をしていての個人的な印象としては、乾燥剤と硬貨はもうちょっと高いんじゃないかなという感じですが、だいたいよく見るのはこんな感じですね。

タバコ誤飲について

件数としては圧倒的に多いタバコ誤飲ですが、実際に大きな問題になることは実はあまりありません。

タバコの中毒量は乳幼児でだいたい1/2〜1本くらいと言われていますが、タバコは美味しくないので、実際に口に入れてもこの中毒量までタバコを食べてしまう子はまずいません。
成人も含めて、タバコをそのまま食べて亡くなった人の報告は今までないはずです(あったらすいません、教えて下さい)。

ではタバコの誤飲は問題がないかというと、一つだけ問題となるシチュエーションがあります。
それは、タバコが浸かった水を飲んでしまった時です。この時は高濃度のニコチン溶液を飲んでしまうことになるので、高確率で中毒症状が出ます。
よくあるのは、飲みかけのジュースの空き缶を灰皿代わりに使っていて、子どもがジュースだと思って飲んでしまうという状況です。

タバコ(ニコチン)の中毒症状としては、嘔吐や興奮状態から始まって、重症になると意識障害やけいれん、徐脈(脈が遅くなること)、呼吸抑制(呼吸が浅くなること)などが見られるようになります。

治療としては、昔はよく胃洗浄をしていましたが、誤嚥などの有害事象もあり、現在では(たぶん)あまり行われなくなっていると思います。
少なくとも僕は胃洗浄はしていません。
この胃洗浄ですが、昔よく行われていたのは、治療目的というより親への「見せしめ」の意味が強くて、「あなたがしっかり管理していなかったから子どもがこんなしんどい目に遭うんだ」ということを思い知らせるという側面がありました。実際に僕も上級医にそう言われたことがあります。
ただ、これもおかしな話で、しんどい目に遭うのは悪いことをした親ではなく子どもなので、こう言った「見せしめ」としての胃洗浄は言語道断です。
あと、こういう言い方をすると気を悪くされる方もいらっしゃるかもしれませんが、タバコ誤飲を起こすような親の多く(全部とは言いません)は、こういう「見せしめ」をしてもあまり響かないので、反省を促す材料にもあまりならないんですよね。
実際、タバコ誤飲を起こした子どものカルテを見てみると、以前にも同じようなことを起こしていたということが結構あります。

ということで、タバコ誤飲に対してはあまり積極的な処置は行わずに、中毒症状が見られるのはだいたいが2-4時間以内なので、その間に症状が出てこないかを経過観察するのが主な対処法になります。

中毒症状が出るくらい飲んでいたとしても、初期の症状としては嘔吐することが多いので、それが一番の治療だったりします。

他の誤飲も同じですが、防ぐためには周りの大人が気をつけるしかありません。
子どもの手の届くところにタバコがあるなんてもってのほかです。
喫煙自体はある程度は(あくまである程度ですが)個人の自由なので否定はしませんが、受動喫煙や喘息の原因になったりするので、子どもの前で喫煙するのはすぐに止めるべきです。

タバコ以外の中毒を起こす誤飲について

医薬品や洗剤、殺虫剤などが中毒を起こす誤飲ですが、実際に中毒を起こすほど飲んでしまうことはあまり多くありません。

とはいえ、何を飲んだか、どれくらい飲んだかで対応は大きく変わってきますし、中には吐かせてはダメなものとかもありますので、基本的には迷ったら病院を受診するという方針で良いかと思います。

救急車を呼ぶか、自家用車で行くかについては、「子どもの救急」という厚労省の研究班と日本小児科学会が監修したホームページの「誤飲」の部分がよくまとまっているのでリンクを貼っておきます。

kodomo-qq.jp

消化管異物について

コインやおもちゃの一部、ボタン電池などが代表的なものです。
ボタン電池は少し特殊なので後で別に述べますが、消化管異物の原則は「食道にあるものは可及的に取り出し、胃の中まで入ったら基本は放置プレイ」です。
食道は狭いので一旦食道に引っかかるとそこにとどまることが多く、食道の壁を傷つけて破ってしまうようなことがあるので速やかに取り出すことが必要です。
胃の中まで入るとそういった心配はないので基本的にはウンチから出てくるのを待つことになるのですが、胃の中まで入ったものでも、鋭利で胃や腸の壁を傷つけてしまいそうなものや、複数個の磁石を一緒に飲んでしまったりする(磁石同士が胃や腸の壁を挟み込んでくっついて傷つけることがあるそうです)と取り出す対象になります。

消化管のどこにあるかはレントゲンを撮ってみないとわからないので、そういったものを飲んだかもしれないときはレントゲンを撮れる病院を受診する必要があります。

とはいえ、「飲んじゃったかもしれない」と言って受診される方は、レントゲンを撮ってみると実は飲んでないことが結構多いです。
「触って遊んでいるのをみた後で無くなったから飲んだかもしれない」と言って受診するケースで実際に誤飲があるのは、僕の感覚では20-30%くらいです。
飲んじゃったかもしれないのが尖っていたり大きかったりでいかにも食道に引っかかりそうなものや、本人に腹痛や吐き気などの症状がある場合は速やかに受診する方が良いですが、小さめのコインやまるっとしたおもちゃの部品などで本人もけろっとしているときは、一度周りをしっかり探してみるのも重要です。

ボタン電池について

ボタン電池については、結構意見が分かれています。
他の消化管異物と同じように、「食道にあるものは可及的に取り出し、胃の中まで入ったら基本は放置プレイ」という方針で良いという人もいれば、胃の中に入っても取り出す必要があると言う人もいます。
現在使われているボタン電池は主にリチウム電池とアルカリ電池だと思うので、それぞれについて危険性をみていきましょう。

リチウム電池

リチウム電池は放電力が高いので、誤飲した後も消化管の中でそれなりの電力で放電し続けます。
電池が消化管の中で放電すると、水の電気分解によって陽極側にアルカリ性の溶液が発生しますが、このアルカリ性の溶液は30分から1時間程度で消化管の壁に潰瘍を作る可能性があると言われています。
このことからリチウム電池は、一回引っかかるとなかなか動かない食道内で異物になると非常に厄介です。
食道のそばには大きな血管もありますし、食道が破れて周囲で感染を起こすと縦隔炎と言って非常に重症の感染症になります。リチウム電池の誤飲では特別速やかな対応が必要になります。
また、この放電は消化管の中どこでも起こるので、胃の中に入っても可及的に取り出せと言われていますが、逆に言えば30分と同じところにとどまっていなければ問題はないわけで、胃の中に入ればそれ以降は消化管の蠕動によって自然に動くので、あまり問題にならないような気もします。
また、放電しなければいいわけで、使い切ったリチウム電池については胃の中に入ればその後は害はほとんどないと考えられます。

アルカリ電池

アルカリ電池は放電力は高くないので、リチウム電池のように電力自体で消化管の壁を傷つけることはないのですが、胃の中に入ると、胃酸で電池の被覆が溶けることで中のアルカリ性の溶液が溶け出して胃を傷つけることがあると言われています。
食道にとどまるともちろん潰瘍や穿孔を起こしたりするのは他の異物と同じです。
つまり、食道や胃の中にある間は危ないけど、胃を過ぎれば危険性はほぼないということになります。

で、結局どうなの?

僕はボタン電池についてはあまり詳しくないので、詳しい人がいたら教えて欲しいのですが、ざっと調べた感じではリチウム電池やアルカリ電池の誤飲で胃より後ろの消化管に潰瘍を作ったり穴を開けたりという報告はあんまり(ぜんぜん?)なさそうですね。
食道でとどまっている場合はもちろん速やかな対応が必要ですが、胃の中に入った後は、有害事象を起こす可能性はあるけど危険性はそれほど高くないと言うのが実際ではないかなと思います。
このことから積極的に取り出せ派と放置プレイ派に分かれるのだと思いますが、個人的には、使い切ったことがはっきりしているリチウム電池と、気付いた時には既に胃を通り過ぎていたアルカリ電池については放置プレイでOKで、それ以外はケースバイケースで対応かなと思っています。
いずれにせよ、こうした消化管異物を取り出してもらう時には小児外科の先生にお願いするので、外科の先生の意向が最も重要になるわけですが。

取り出し方としては、マグネットカテーテルという磁石がついたカテーテルで釣り出す方法や、麻酔をかけて胃カメラで取り出す方法などがありますが、どれもなかなか大変でできればやりたくない処置です。

気道異物

最後は気道異物です。
異物が消化管ではなく、空気の通り道の気管や気管支に入ってしまうと気道異物になります。
気道異物の原因は圧倒的にピーナッツなどの豆類に多いです。
このことから、豆類は3歳になるまでは食べないようにと言われることが多いと思います。
気道異物の症状は、なかなか治らない咳や喘鳴(ぜいぜい)です。
喘息と間違われることもたまにあり、全然喘息が治らないからCTを撮ってみたら気道異物だったということもそれなりによくある話です。
特に風邪でもない子が急に咳込み出したり喘鳴が止まらなかったり、という場合は要注意です。
僕も、喘息として紹介されてきた子の話をよく聞いてみると、節分に豆を食べた後からぜいぜいし始めたというので一応CTを撮ってみたら異物だったという経験をしたことがあります。

治療としては、簡単に取り出せるものではないので、手術室で全身麻酔をして気管支鏡という内視鏡で取り出してもらうことになります。非常に大変です。
取り出した後も化学性の肺炎を起こしたりすることがあるので、小さい子には豆を食べさせないようにしましょう。

最後に

タバコ誤飲から始まり、気道異物までざっと見てました。
飲んじゃったかもしれないだけで実際に飲んでないものから、手術室で取り出さなければいけないものまで様々ですが、異物誤飲は周りの大人が気をつけていれば、ほとんどは防げるケースばかりです(中にはこれは仕方ないなというものもありますが)。
大人の不注意によって辛い思いをするのは子どもなので、大人の責任としてできるだけ子どもの安全は確保してあげたいものです。