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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

嘔吐下痢について小児科医が語ってみるよ

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どうも、あんきろさんです。

東京では桜の開花が宣言されたみたいですね。もう春はすごそこですよ!

さて、そんな春に子どもたち、特に乳児を苦しめるのがロタウイルスによる胃腸炎です。
保育園や幼稚園の入園と相まって、この時期はどうしても他の原因のウイルスも含めて嘔吐下痢になりやすいので、その対処法についてまとめてみます。

 

 目次です。質問形式で見ていきますね。

嘔吐下痢の原因は?

嘔吐下痢(急性胃腸炎)を引き起こす病原体としては、ノロウイルス・ロタウイルスが2大原因ウイルスです。
ノロウイルスは秋口から冬にかけて、ロタウイルスは冬の終わりから春にかけて流行することが多いです。
今の時期はロタが流行しやすい時期です。
急性胃腸炎の他の原因としては、アデノウイルス(プール熱の原因のウイルスです)やエンテロウイルスなどの夏風邪のウイルス、大腸菌やサルモネラなど食中毒の菌があったりもします。

どんな症状の経過になるの?

ノロやロタなどのウイルス性胃腸炎の多くは、まず嘔吐から症状が始まり、それと同じくらいのタイミングで多くの場合は38℃前後の発熱がみられます。熱はないこともありますし、40℃近い熱が出ることもあります。
嘔吐がしばらく続いたあと、下痢に移行していきます。
どのくらい嘔吐が続くかは原因や本人の状態次第ですが、数回で治るものもあれば2-3日嘔吐が続くものもあります。
とはいえ長くても2-3日のことがほとんどで、下痢が始まるのと同じくらいのタイミングで落ち着いていきます。
下痢も程度は様々で、ほとんど目立たないものもありますし、長いものは1週間近く続くこともあります。
ノロに比べてロタは下痢の程度がひどく、長引く傾向があります。

ウイルス性の胃腸炎では腹痛はあったりなかったりですが、食中毒による細菌性胃腸炎は強い腹痛がみられます。
便についても、ウイルス性の胃腸炎で血便が出ることはあまりないですが、細菌性の胃腸炎ではしばしば血便がみられます。

どんな時は病院を受診する必要があるの?

これはなかなか判断が難しいところです。
少なくとも、数回嘔吐したからすぐに受診しないといけないことはありません。
下に書きますが、ウイルス性胃腸炎に根本的な治療はなく、主に脱水の補正ができる治療となります。
嘔吐自体は本人にとっても周りにとっても非常に辛いものですが、体に吸収される前の水分が出てきているだけなので、嘔吐がひどいからと言ってそれ自体で脱水になることはありません。
嘔吐が続いて水分が取れない状態が続いて初めて脱水になります。
嘔吐に対して吐き気止めが使われることがありますが、胃腸炎のごく初期の嘔吐が強い状態で使っても、経験的にはちょっと症状がましになることはあっても、劇的に効果が出ることはほとんどありません。
つまり、嘔吐が始まってしばらくの間は、何をしても嘔吐が続くという胃腸炎の経過の中で一番辛い時期ではあるものの、病院を受診しても特にできることは何もないという残念な状態なのです。
胃腸炎の多くは、嘔吐が始まってからの辛い数時間を乗り切ると、次第に症状が落ち着いていきます。そう言った場合は病院を受診する必要はありません。改めて下に書きますが、水分摂取・食事摂取に気をつけてもらえばそのまま治っていくことがほとんどです。
逆に、最初の数時間を過ぎても症状に改善の兆しが見られずに嘔吐が続くような場合は、そろそろ受診を考える時期です。
例えば、朝に嘔吐が始まって様子を見ていたけど夕方を過ぎても吐き続けて水分が全然取れないとか、夜に吐き始めて朝まで嘔吐が続くような場合です。こういった場合はそろそろ脱水が心配されてきます。
脱水の症状としては口の中がネバネバして乾いていたり、皮膚のハリがなくなったりということがありますが、なんとなく元気がなくなってくるというのが一番です。

あとは、上にも書きましたが、強い腹痛がみられたり血便があったりする場合は細菌性胃腸炎の可能性があり、これについては抗生剤が効くので早めに受診しましょう。

治療は?

上にも書いたように、食中毒のような細菌性の胃腸炎には抗生剤が効きますが、嘔吐下痢の大半を占めるウイルス性胃腸炎に根本的な治療はありません。胃腸炎を起こすウイルスをやっつけるような薬剤はないからです。
そのため、治療としては脱水の補正と症状を緩和するような対症療法になります。
とはいえ、対症療法と言っても嘔吐を抑えるような制吐剤と下痢を止めるような止痢剤ですが、上に書いたように劇的な効果は期待できません。
そもそも、制吐剤については、胃腸炎が原因の嘔吐であればいいのですが、他の原因による嘔吐だった場合に、症状が隠されて原因の発見が遅れることがあるから積極的に使わないほうが良いという先生もいますし、止痢剤についても、下痢は病原体を体の外に出そうとしている生体反応なので、不必要に止めないほうが良いと考えられています。

あとは、整腸剤を出されることが多い(僕も出します)ですが、腸内細菌叢を整えるという意味で用いるので、少し治りは早くなるかもしれませんが、少なくとも吐いている時に嘔吐を止めるような作用は期待できません。

点滴については項目を変えてみてみましょう。

点滴すると早く治るの?

よく「吐いているので点滴してください。この前は点滴をしてもらってすぐ治ったの。」と言われますが、点滴はただの水分と電解質の補充なので、脱水でぐったりしているのであれば点滴をしてあげれば元気にはなりますが、点滴をしても早くは治るわけではありません。
水分と電解質の補充についても、嘔吐が落ち着いて経口摂取できるのであれば、口から摂取するほうが安全で手間がかかりません。
下で詳しく書きますが、現在は経口補水液という飲む点滴のような物が簡単に手に入るようになっているので、点滴を必要とする機会はかなり減っていると思います。

水分摂取のポイントは?

「少しずつこまめに根気強く」がポイントです。
これは字にすると簡単そうなのですが、実際にやってみるとかなり難しいです。
嘔吐が激しいうちは何をやっても吐くので無理に飲ませる必要はなく、嘔吐が落ち着いてきて1時間くらい嘔吐がなければ少しずつ飲ませていきます。
この少しずつというのは本当に少しずつで、最初はスプーンに1杯分くらいから始めます。
スプーン1杯飲めたら、ちょっと様子をみて次はスプーン2杯というように徐々にゆっくり増やしていきます。
嘔吐が続いたあとはどうしても喉が渇いているので一気にたくさん飲みたがりますが、たくさん飲むと胃が刺激されてすぐに嘔吐してしまうので、「少しずつこまめに根気強く」が重要です。

摂取する水分としては、上に書いた経口補水液がベストです。
一番有名なのは大塚製薬のOS-1®でしょうか。所ジョージさんがCMしているやつですね。
他の会社からもいろいろ出ていますので、基本的にはどれを使っても大きな違いはありません。
この経口補水液を実際飲んでみたらわかるのですが、普段飲んでも激烈に美味しくありません。
同じ大塚製薬のポカリスエット®やコカコーラのアクエリアス®などと比べて糖分が少なく塩分が多いので、普通の元気な時に飲むと味が薄い上にちょっとしょっぱく感じるからだと思います。
ただ、この味が薄くてちょっとしょっぱいのが吸収には一番重要で、脱水の時(主にお酒を飲みすぎたあと)にOS-1を飲むと非常に美味しく感じます。
世のお父様方におかれましては、二日酔いで水分もろくに取れない時に一度飲んでみられることをおすすめします。

この経口補水液は非常にいいものなのですが、ただちょっと高いのが難点なので、それっぽいものを自分で作るのもありです。だいたい水1Lに食塩3-4gと砂糖40g(+フレーバーとして果汁など)を加えると、糖分とナトリウムについてはそれっぽい組成になります。ただ、この組成ではカリウムが足りないので、早めにご飯を食べさせてあげる必要があります。

ご飯を食べさせるのはいつから?

水分さえしっかり摂取できていれば、体には栄養の蓄えはあるので、しばらくご飯を食べなくてもそれで栄養面で問題が起きたりすることはありません。
ただ、腸管はご飯を食べないとすぐに機能が落ちてしまうので、胃腸炎からの回復ということを考えると、食事はできるだけ早くに再開することが望ましいと考えられています。
したがって、ある程度の水分を飲んでも吐かなければ少しずつご飯を食べさせてあげましょう。

食べさせるご飯の内容については、昔はミルクは薄めて飲ましたり、食事についてはおかゆからゆっくりと普段の食事に戻してあげるように指導していましたが、現在の考え方からは、厳密な食事内容の制限は必要ないと考えられています。

赤ちゃんであれば、薄めずに普段通り母乳やミルクを飲ませてあげればいいですし、離乳食が始まっていれば普段の離乳食を食べさせてあげれば良いと考えられています。ただ、離乳食については段階を一つくらい戻してあげたほうが食べやすいかもしれません。

普通にご飯を食べる子であれば、食べられるなら普段通りの食事で構いません。とはいえ、欲しがらないのに積極的に普段通りの食事を食べさせる必要はなく、胃腸炎の時はおかゆやよく煮たうどんとかの方が食べやすいのは多分その通りだと思うので、本人の状況から無理なく食べられそうなものを食べさせてあげれば良いです。

一時的な下痢の悪化などの可能性はありますが、必要以上に食事内容を制限しない方が腸管の機能を低下させずに結果的には早く治ることが多いというのが現在の考え方です。

いつになったら保育園(幼稚園)に行っていい?

感染性胃腸炎のお役所的な登園の目安としては

症状のある間が主なウイルスの排出期間であるが、回復後も数週にわたって便からウイルスが排出されることがある。下痢、嘔吐症状が軽減した後、全身状態の良い者は登校(園)可能だが、回復者であっても、排便後の始末、手洗いの励行は重要である。

となっています。
嘔吐がひどい間はもちろんお休みさせてあげて欲しいのですが、「下痢だけになって本人は元気」という状況が一番悩ましいところです。
「下痢がある間は他の子に移るから休んでください」と言われることがあると思いますが、そんなこと言い出したら上に書いてあるように数週間休まないといけなくなりますしね。
とはいえ、本人がいくら元気でも1時間に1回下痢をするような状態で保育園(幼稚園)に行くのも確かにどうかと思いますし、現実的には、日中の下痢の回数が減ってオムツの処理があんまり大変じゃなくなったらOKぐらいでしょうか。全く医学的ではないですが。
とはいえ、医学的にはあんまり明確な線引きはできないので、この辺りは保育園(幼稚園)と保護者との間で要相談という感じです。

予防法は?

ノロ・ロタともに感染力が非常に強いので、いったん保育園や幼稚園で流行りだすと、予防はなかなか難しいのが現実です。
できることとしては、手洗いをしっかりすることと吐物や便の処理をしっかりすることくらいです。
ロタウイルスについては予防接種があるので、ちょっとお高いですし打てる時期が限定されていますが検討してみる価値はあると思います。
ロタの予防接種については下記参照。

www.heppoco-pediatrician.com

まぎらわしい病気は?

上に書いたように、ウイルス性胃腸炎の多くは最初の症状は嘔吐と発熱なので、特に乳児の場合は症状を訴えることが難しいので、他の嘔吐を起こすような病気との区別が難しいことがあります。
特に、周りに同じような症状の人がいて胃腸炎が流行しているのであれば判断は簡単なのですが、周囲の流行がないとなかなか判断が難しくなっていきます。

例えば、おしっこの感染症である尿路感染は最初の症状が発熱・嘔吐というのはよくあることで、お腹の風邪かなと思って様子を見ていたら実は尿路感染だったというのは時々あります。
尿路感染より圧倒的に頻度は少ないですが、髄膜炎についても同じようなことがあります。
こういった重症の感染症の場合は、目に見えて本人の状態が悪くなっていく(ぐったりして活気がなくなっていく)ので、周りの流行状況に加えて、そういったところを小児科医は見ています(見ているはずです)。

お腹の病気の中で胃腸炎と区別が時に難しいのは腸重積です。
腸重積は、腸管の一部が他の腸管の中にめり込んでしまう病気で、腹痛・嘔吐・血便が3つの特徴的な症状です。
この3つの症状が初めから揃うことはあまりなく、最初は腹痛(腹痛を表現できない乳幼児の場合は不機嫌という症状で現れることが多いです)と嘔吐だけのことが結構あります。
このような時は胃腸炎との区別が難しいことがあります。
腸重積の時の腹痛・不機嫌は間欠的であることが多いので、数十分間隔で泣いたり泣きやんだりしているような子どもは、腸重積の可能性を考えてお腹の超音波の検査をすることが多い(はず)です。

学童期以降で胃腸炎とまぎらわしい病気としては、やはり虫垂炎(盲腸)です。
虫垂炎の典型的な症状はお腹の右下が痛くなることですが、初期症状は胃のあたりがムカムカして吐き気があるということが結構あります。
ご丁寧に38℃前後の発熱まで出てくれることが多いので、さらに判断が難しくなります。
初期の状態で区別するのはなかなか難しいことが多いので、症状の経過から判断することになります。
経過中に、痛みが右下腹部に移動してきたり、歩いてもお腹に響くような痛みが出てきたり、我慢できないような痛みが続くようなことがあれば、虫垂炎が怪しいので早めにまた受診するよう伝えさせてもらっています。

そのほかにも、頻度はかなり低いですが脳腫瘍で嘔吐が見られていたのが胃腸炎だと考えられていたりというのもありますし、実は嘔吐というのはなかなか難しい症状です。

最後に

ということで、一通り胃腸炎ついて見てきました。

ポイントは
・嘔吐がある間はじっと我慢
・嘔吐が落ち着いたら「少しずつこまめに根気強く」水分摂取を
・それでも嘔吐が続くときは病院受診を
・食事摂取については厳しい制限は不要で、早めから食べられそうなものを無理なく
・他の原因の嘔吐が胃腸炎に紛れ込んでいることもあるので注意
というところでしょうか。

子どもがかかると、嘔吐にせよ下痢にせよ本人も家族も大変なので、できればかかりたくない病気ですが、かかってしまった場合の対処について少しでもお役に立てれば幸いです。