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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

こどもの嘔吐下痢時のウイルス検査は本当に必要?〜保育園関係者にも聞いてみたい〜

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どうも、あんきろさんです。

下の子がこの4月から保育園に行き始めているのですが、さっそく熱を出しました。
自分でブログの記事(この春から保育園・幼稚園に子どもを入園させたお父さんお母さんに小児科医から一言)に書いた通り、まぁ仕方ないことなんですが、子どもが熱を出すとやっぱり大変ですね。
上の子はだいぶ保育園で揉まれて熱を出さなくなったのですが、これからしばらくは下の子が感染症との戦いです。

原因については、吐いてはないのですが、便がやや薄い色でだいぶ酸っぱい匂いなので、おそらく時期的にもロタじゃないかと思っています。
ロタの予防接種をしているので、おそらく軽症で済んでいるのでしょう。嘔吐がなくて本当によかった。
やっぱり4月から保育園に行く子どもはロタの予防接種はできるだけしておく方が良いと実感しました。
それにしても3万円はお高いので、早く定期接種にならないもんですかね。
ロタの予防接種については下記参照です。

www.heppoco-pediatrician.com

さて、前置きがすっかり長くなりましたが、保育園で嘔吐したり下痢したりすると必ず保育園の先生から言われる一言があります。
「ノロウイルス(ロタウイルス)の検査をしてきて」です。
外来をしていても同じように言われて受診する人がたくさんいるので、うちの保育園だけではなく、多くの保育園や幼稚園で同様の対応を取っているのではないでしょうか。
でも、この検査本当に必要なんでしょうか。

インフルエンザの検査の必要性については、前に記事(そのインフルエンザ検査、本当に必要ですか?)を書きましたが、その検査の必要性はともかく、インフルエンザは学校保健安全法(保育所における感染症対策ガイドライン)で出席停止の対象となっているので、怪しければ「インフルエンザの検査してきて」と言うのはまだ納得できます。

一方で、ノロウイルスやロタウイルスについては、特に個別の規定はありません。
まとめて、感染性胃腸炎(流行性嘔吐下痢症)として「下痢・嘔吐症状が軽快し、全身状態が改善すれば登校可能」と規定されています。
つまり、原因がノロであろうとロタであろうとその他のウイルス性胃腸炎であろうと、はたまた大腸菌(O-157などの腸管出血性除く)やサルモネラなどの細菌性胃腸炎であろうと、学校保健安全法での対応は同じということになります(ちなみにO-157などの腸管出血性大腸菌による胃腸炎は「症状により学校医その他の医師が感染の恐れがないと認めるまで」と規定されています)。

これが意味することは、「保育園や幼稚園・学校で感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)の流行を防ぐための対策は、原因が何であれ同じ」ということです。
原因によって感染しやすさに差はあるものの、胃腸炎が感染する経路は吐物か便を介してなので、まぁ当たり前といえば当たり前です。
もちろん、学校だけでなく家庭での流行を防ぐための対策も一緒です。

ちなみに、医学的にもノロウイルスやロタウイルスを感染性胃腸炎の原因として特定することに意味はほとんどありません。
ノロであれロタであれ、ウイルス性胃腸炎には効果のある抗ウイルス薬はないので、基本的に対症療法(例えば嘔吐にたいしては制吐剤など)で様子を見るしかないためです。
胃腸炎の際の対処については下記にまとめています。

www.heppoco-pediatrician.com

ロタについては、たまに脳炎・脳症を起こすことがあるので、そういった疾患を疑うような場合には確定診断のために検査が必要ですが、ごく稀なケースです。

逆に、大腸菌やサルモネラ・カンピロバクターのような細菌性胃腸炎には抗生剤が効くので、結果によって治療が変わることから疑わしい場合は便の細菌学的検査を行う意味があります。

ちなみに、検査についてですが、ロタウイルスは全ての疑わしい患者さんを対象に保険適応で検査できますが、ノロウイルスについては、子どもは3歳未満しか保険適応になりません。
すなわち、3歳をすぎた子どもがノロの検査を行う場合は、全額負担の自費診療になるか、病院の持ち出しで検査することになります。
どれくらい費用がかかるかは病院によると思いますが、1万円くらいかかるところもあるんじゃないでしょうか。
しかも、保育園(幼稚園、学校)から帰った後に病院を受診すると、時間外診療になっているところも多いと思いますが、時間外にはノロやロタの検査できないところもたくさんあります。

「じゃあどんな時にノロウイルスやロタウイルスの検査をするんだ!」と言われそうですが、一番良い適応はノロやロタが重症化する集団において疑わしい患者さんが出た場合です。
例えば、入院病棟とか老人介護施設とかですね。
保育園や幼稚園ではみんなゲロゲロピーピーするだけですが(これも当事者にとってはもちろん大変なのですが)、こういった集団では速やかに対応しないと命に関わるような事態になってしまいます。

ということで、集団生活における流行防止の観点からも、医学的な治療の観点からも、もともと元気な子どもにノロウイルスやロタウイルスの検査を行う意味はほとんどありません。原因がわかってスッキリするだけです。でもそれはただの自己満足です。
多くの小児科医がそのように思っていると思うのですが、一向に「保育園で検査をしてこいと言われた」という受診が減らないのは、医療側と保育園・学校側の対話不足が原因で、これはまさに小児科医の不徳の致すところです。
「お前もこんなブログでガヤガヤ言ってるぐらいならなんとかしてみろよ」と言われそうですが、保育園の嘱託医として意見を求められるならまだしも、一保護者の立場で「いやー、ノロの検査は無意味なんでうちの子はやりません」とか言うと、モンスターなんちゃらに認定されそうで、子どものことを考えるとなかなか言えないんですよね。

とはいえ、感染症の流行に過敏になる保育園の立場というのも理解はできます。
ただ、こういった検査について、保育園や学校の関係者の皆さまはどのように考えていらっしゃるのでしょうか?
なんとなく心配ではっきりさせておきたいから、という理由で検査を依頼してないでしょうか?
原因がはっきりすることで保育園や学校側の対応が何か変わっているのであれば、もしそれが理にかなっているのであればもちろん尊重しなければいけないと思いますが、別に何も変わらないのだったら自己満足です。
逆に、嘔吐下痢の子どもがいても「ノロやロタじゃないから大丈夫」と思っているのであれば、それは完全に間違いです。そのうちにきっと通っている子どもも含めて痛い目にあいます。

いずれにせよ、保育園や幼稚園、学校にとっても、そして小児科医にとっても、一番は子どもだと思うので、子どもの負担になるような不必要な受診や検査はできるだけ無くしてあげたいものです。
また別の話になってしまいますが、社会全体で見ると無駄な受診や検査はそれだけ医療資源や医療財政も圧迫しますし。
保育園・幼稚園・学校関係者のみなさん、いかがお考えでしょうか?