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パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

医学部受験について小児科医がちょっと語ってみるよ

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どうも、あんきろさんです。
前回の東大理Ⅲ家族の記事(「
子ども4人を東大理Ⅲに入れることは果たして誰の幸せなのか?」)に関連して、今回は「自分の子どもに医学部を受験させたいか(医師になってほしいか)?」ということについて書いてみようと思います。

医学部合格のテクニックなどを求めてここにたどり着かれた方におかれましては、全く有用な情報は書かれておりませんので前もって陳謝しておきます。むしろ医学部を受験しようと思っている方にとっては有害な情報の可能性すらあります。まぎらわしいタイトルをつけてしまい大変申しわけありませんでした。でもせっかくなんで読んで言ってください。

 

 はじめに

みなさんは自分の子どもに医者になってほしいと思いますか???

sho1.jp

上の記事は小学館の小学1年生のホームページのコラムに約1年前に載っていたもので、医師はなってほしい職業3位でした。ちなみに2位は公務員で、1位は「子どもがなりたい職業」との結果でした。

このように考えているのは親だけではないようで、 入院している患者さんの家族、特におじいちゃんおばあちゃんに「どうやったら医者になれますか?」と聞かれることも結構あります。

子どもがなりたい職業ランキングでも医師はまずまず上位につけていることが多いですし、なかなか人気の職業のようです。

なんでそんなに人気なの???

自分は医者の世界の中の人なので、客観的に外から見たイメージというのはもうわかりませんが、だいたいインターネットで検索してでてくる医者のイメージを以下に羅列してみましょう。それにしても、yahoo知恵袋には医学部に行く理由を知りたがる人がたくさんいるんですね。いろいろ読ませていただき勉強になりました。

ざっと挙げてみると、
・資格があって安定している
・人の役に立ててやりがいがある
・社会的地位が高い
・給料がいい
・テレビや本(漫画)の医師に憧れて
ぐらいでしょうか。
せっかくなのでひとつひとつコメントしてみましょう。

資格があって安定している

これはその通りですね。
日本に公的・私的なものを含め資格は山ほどあると思いますが、その中でも最強の資格のひとつだと思います。
今後どうなるかは知りませんが、一度医師免許を取ればよほど悪いことをしない限り取り上げられることはありませんし、一生ものの資格です。
医師免許があれば、研究職などについて医師として働かない場合でも、健康診断などのバイトでなかなかいいお給料がもらえるみたいですし、それこそ持てるなら持っておいて損はない資格です。

「安定している」については、今後の日本は人口減社会になって医療費も削られていくことになると思うので、一概にそうとも言い切れないと思います。
病院も潰れるところはたくさんでてくると思いますし、それこそ国民皆保険が崩壊してしまえば、病院もバリバリの競争社会の一員に仲間入りするので大変だと思います。
今は安定しているように見えますが、今後も何十年という単位でこの状態が続くかはちょっと疑問です。

人の役に立ててやりがいがある

これもその通りです。人の役に立てることは、何と言っても医師の一番いいところだと思います。
しかも、病気を治したり命を助けたりするのは、他の職業にはなかなかできない役に立ち方で、非常にやりがいがあります。
ただ、このやりがいという言葉はかなり曲者です。
「やりがい搾取」という言葉が某テレビドラマをきっかけに話題になりましたが、医師、特に若手医師の現状はまさにこの通りです。

「やりがい搾取」とは、労働者が、金銭による報酬の代わりに“やりがい”という報酬を強く意識させられることで、賃金抑制が常態化したり、無償の長時間労働が奨励されたりする働きすぎの組織風土に取り込まれ、自覚のないまま労働を搾取されている状態をいいます。教育社会学者で東京大学教授の本田由紀氏は、すすんで仕事にのめり込み、充実感や自己実現を得ているように見える若年労働者が、実際は経営者側がしかけた、より少ない対価(雇用の安定性、賃金)で最大の労働効率を引き出すための巧妙なからくりにより、ワーカホリックへと突き動かされていると分析し、こうした搾取構造を「やりがいの搾取」と名づけました。 

「やりがい搾取」とは? - 『日本の人事部』より

よく、仙人は霞を食べて生きると言いますが、若手医師の多くはおそらくやりがいを食べて生きています。

昨年、某広告代理店での過労死問題をきっかけに、ブラック企業という言葉がまたそこらじゅうを賑わしていましたが、医者という職業は(選ぶ科と病院にもよりますが)多くのケースにおいてブラックですし、中にはブラックの極北みたいなケースもあります。
長時間勤務は常態化していますし、当直を挟んでの36時間連続勤務なんてのはまぁ普通です。
担当している患者さんの調子が悪い時は1週間病院に泊まり込み、みたいなことも多くはないですが、ごくたまにあります。
ブラック自慢をしても何にもならないですが、僕が今までに経験したmaxの時間外労働は月に150時間くらいです。これとは別に日直と当直を合わせて10回くらいしていたので、9-17時以外という意味での時間外と考えると月250時間くらいでしょうか。
ちなみに一応時間外をつけはするものの、実際に時間外として給料が出るのはこのごく一部です。
うん、まさにブラック。
まぁ、あくまで科にもよりますし、病院にもよりますので、みんながみんなこんな生活を送っているわけではないですが、逆を言うと、僕なんてまだ甘い方で、もっと大変な医者生活を送っている人もたくさんいるということです。
外科の先生なんて、たまに日付変わっても予定の手術してたりしますからね。いつ寝てるんでしょうか?

とはいえ、この結果として得られるやりがいはなかなか他では得難いものです。そんなやりがいが欲しいという人は是非がんばって勉強して医学部に入りましょう。
時間外で250時間働いた時も、無理だ無理だと思いながらなんだかんだ言って問題なく生きていけてました。意外と人間なんとかなるものです。過ぎてしまった今となっては、いい思い出ではないですが、いいネタではあります。

社会的地位が高い

これについては僕はまだ若手に毛が生えた程度(いや、まだ若手か)なのでよくわかりません。 
「先生」と呼ばれるからには偉いんでしょうけど、あんまり実感する場面はないですね。
少なくとも病院内においては、研修医のうちは役に立たないゴミクズみたいに扱われることが結構あるので、社会的地位を求めて医者になると最初は大変かもしれませんね。

給料が高い

これは本当にピンからキリまでいろいろです。どの病院で働くか、どの科で働くかで大きく変わってきます。

僕ぐらいの世代では、平均に比べると確かにそれなりに高めではあると思いますが、特に末端の小児科医なんてたかが知れた給料ですし、労働時間や内容に見合ったものかと言われると、うーんという感じです。
それでもだいぶマシになった方で、研修医の時なんて、こんな給料だったら同じ時間コンビニでバイトしてた方が儲かるよな・・・、という話をよく同期としていました。
偉くなってもあんまり変わらないみたいで、人づてに聞いた某国立大学の教授の給料がびっくりするくらい安くて笑ってしまいました。その先生は、教授になっても外勤という名のバイトをがんばっていらっしゃるそうです。
大学の教授の給料についてはおもしろい話があって、日本のどっかの大学の教授がアメリカのどっかの大学の教授と話していて、アメリカの教授が「下世話な話で申し訳ないけど、給料どれくらいもらってるの?」と聞いてきたので日本の教授が額をいうと、アメリカの教授は「ふむむ、まあまあもらってるな、うちよりちょっと高いな」と言ったそうですが、さらによくよく話してみると、日本の教授は1年間の総額を言ったのに、アメリカの教授は月額だと思ったという笑い話があります。ほんとかどうかは知りませんけど。
いずれにせよ、日本の大学教授の給料は安いらしいです。
縁遠い世界なのでよく知らないですけど、開業の先生方などはそりゃあ儲けていらっしゃるのでしょうが、全体的にみると、すごく魅力的な給料かと言われると安易に首を縦には振れない感じです。

まぁ、どの世代においても、医学部に入れるくらいの能力があるのであれば、もうちょっと楽に(というと悪いですが)お金を稼げる職業はあるのではないかと思います。

テレビや本(漫画)で憧れて

テレビドラマや漫画に出てくる医者は言わずもがなですがフィクションです。皆さんわかっていらっしゃると思いますが、あんな医者はたぶんいません。
医者の仕事のほとんどは地味な作業の積み重ねです。
パソコンでカルテを書いたり、パソコンで検査や薬のオーダーをしたり、パソコンばっかりしています。
あとは、外来でお話をうんうん聞いたり、病棟で入院中の子どもと遊んだり。
自分で書いてて、医者じゃなくてもできそうな気がしてきました。

小児科医なんて言わずもがなで地味な仕事ばかりですが、派手に見える外科の先生の手術だって地味の積み重ねです。
ドラマだとなんか神の手みたいな人が色々ガシャガシャやって大手術完了!みたいな感じですが、実際の手術を見ていると、本当に細かいところを丁寧に丁寧に作業していって、1時間前とやってること変わらないように見えるけど、いつの間にか腫瘍が取れたみたいな感じです(外科の先生におかれましてはざっくりとした表現で大変申し訳ありあません)。
よくもまぁ、あんなに細かいことをあれだけの集中力を持続してできるなぁと感心します。

いずれにせよ、一場面だけ切り取ると派手なように見える医者の仕事ですが、それ以外の場面は地味なものです。
とはいえ、医者に限らず仕事はすべからくそんなものな気もしますが、とにかく医者の仕事はドラマでみるような華々しいものではございません。

ということで

最初の「自分の子どもに医師になってほしいか」という問いですが、僕の答えとしては「なりたいというなら止めはしないけど、積極的にお勧めはしない」という感じでしょうか。
入院中の子どもの家族に「どうやったら医者になれますか?」と聞かれた時も「やりがいはあるけど、みんなが思うようないいところばっかりの職業じゃないですよ」ということを言っています。

でも、ここまでボロクソ(?)に書いておいてなんですが、いい職業であることは間違いないと思いますよ。
「この仕事は僕には向いてないなぁ」と思うことはあっても「医者をやめたい」と思ったことは実はないですね。
まぁ、僕の環境が恵まれていただけかもしれませんが。

ただ、これから医者になろうという人にとっては、さっきも書きましたが、これから日本の人口が減っていく中で、国が医療にかけられるお金というのはどんどん減っていくと思うので、これまでとは違った大変な思いをする可能性を否定できません。

仕事の実際も含めて、「こんなはずじゃなかったのに」という思いをしないように、大学受験時の進路は親子ともに慎重に選んでいただきたいものです。

最後に

1年ちょっと前に、下の増田さんがちょっと話題になっていました。

anond.hatelabo.jp

この増田さんは現在どうしていらっしゃるんでしょうね。そろそろ病院実習が始まる頃だと思うので、元気に大学生活を送っているといいんですが。

でも意外に、「別に医者になりたかったわけじゃないけど、成績が良かったから医学部を受験した」というやつが患者さんから評判のいい医者になったり、やる気に満ちあふれていた人がドロップアウトしたりするので、実際にやってみないとわからないというのが現実なんですよね。なかなか難しいところです。

4月から医学部に進学が決まっている皆様におかれましては、脅すようなことを書いてしまい誠に申しわけありません。
とはいえ、上に書いたようになんだかんだ言っても医者はいい仕事ですから、心配せずにまずは大学生活を謳歌してしっかり遊んでしっかり勉強してくださいね。
これで良かったのかなと思っている人も、ひとまず6年あるので、医学部という肩書きを活かせる道をいろいろ探してみてください。6年経ったらいろいろ変わると思うので。

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